山羊座の友人/ 1巻 /完結
『山羊座の友人』
- 原作: 乙一 漫画: ミヨカワ将
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/06/04
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (2件) を見る
松田ユウヤはある夜、同級生の若槻ナオトが殺人を犯した現場に遭遇する。
悲惨ないじめの標的になっていた若槻は、追い詰められて相手を殺してしまったのだった。
今までいじめを見て見ぬふりしてきた罪悪感から、ユウヤは彼と逃げる決意をするが!?!
少年2人の逃避行の果てに待つ、衝撃の真実。
そしてあまりに切ない結末とはーーー……
-----絵柄--------------------------------------------------
表紙の感じと、切ない青春ミステリーものだと聞いて買ってみた。
まず、
…想像以上に絵が綺麗…。
絵柄が安定しているのと、
ミステリーに触れなかった人でも 惹かれて一気に読めてしまうような作品。
(盛り上がるシーンでは大胆なコマ割りをしてるのが好印象…!)
表紙の次ページのフルカラー挿絵も素敵
-----ざっくり内容-----------------------------------------
・自室のベランダに不思議な漂流物が流れる
主人公 松田ユウヤ
・唯一その漂流物の事を知ってる
後ろの席の女の子 本庄ノゾミ
・いじめっこ 金城アキラ
・いじめられっこ 若槻ナオト
この四人を中心に物語は始まる
主人公自体はイジメを見て見ぬフリする(第三者的な)一般人である。
そんな松田はある夜若槻に声をかけられ、見てみると若槻が犯した殺人現場が…。
(今までみたいに…放っておけばええんや…)って思ったけど咄嗟に呼び止めてしまう。
それは多分、ベランダに降ってきた新聞が脳裏にチラついたからに違いない。
その未来からの新聞には、殺人事件にまつわる記事が載っていたのだ。
んで焦る松田は、かくまうかの如く若槻と共に逃亡する
ところが………
・中々自首しない
・若槻はあの夜、上手く逃げれるはずだったのにわざわざ自分に声をかけた
そこで少しずつ疑問を抱く松田。
(´-`).。oO(若槻が本当に殺したのか…?)
ここから真犯人に繋がる伏線を次々と回収する松田。
猛スピードの名推理でどんどん真実を暴く松田。
松田やべえ
って感じでひたすら唖然としてた←
しかし結果的には新聞の通りになってしまう。ここも凄く心が痛んだが、
皆が幸せな展開になるにはどうも不自然で、
彼らの心情を考えると読後もひしひしと切なさが広がる作品だった。
--------------- 感想 & ネタバレ ------------------------
正直 真犯人やいじめっ子サイドも見てみたかったのだが尺の問題もあるのだろう。
それでも見事に伏線を回収し、1冊に綺麗にまとめる作者の力量がすごいと思った。
そして 凄く凄く切ない。
切ないに尽きるって言っても過言じゃないくらい、切ない。
壮大なネタバレをしちゃえば、
真犯人とは
本庄さん
のことである。
(´-`).。oO(言ってしまった…)
そして若槻松田本庄のこの3人の心情には
ずっと感情移入しっぱなしで
込み上げるものがあるのだ。
• 若槻は罪を着せられるために呼び出され、それを分かっていながら死んでも真実を言わないつもりだった。
彼女の罪を帳消しにするために。
……若槻がどんな想いで逃亡の日々を送ったかを考えると辛くなる。
• 松田も松田で殺人が起こる日に、本庄さんに死んでほしくない想いから「大雨になるから家にいた方がいい」と嘘をついた。
よって本庄さんは降水確率0なのに傘を持って殺りに出かけ、目撃者の印象に残ってしまったのだ。
彼女を守ろうとついた嘘が
逆に彼女の決定的な犯罪を裏付ける事となり、本当に皮肉なものだ。
• 本庄さんの姉(本庄サヤカ)は中学の頃の金城アキラの被害者であり、
彼によって彼女たちの人生が壊された。
そして佐々木カズキも本庄ノゾミと同じ境遇に立ち、彼らは金城に復讐するためだけの高校生活をずっと送っていたのだ。
結局本庄さんは自殺してしまうが
ベランダで起こる非日常が彼女の命を救ったわけではなく、
あのワクワク感が彼女の精神的な面を支えていたという事に絶妙なリアリティを感じた。
…色々書いたが、本文には書ききれなかった伏線も沢山あるので《読み返し》を
全力で推奨する。
そして私の足りない表現力で
魅力を伝えるのに限界があったが
とにかく 《切ないストーリー 》が好きな方にはオススメの1冊だ。